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執筆者の写真ふじおかんたろう

無茶祭2023 その3『コップくんのひみつ』おしまい

更新日:4月4日

2024年、3月19日に、『コップくんのひみつ』は千秋楽を迎えました。

あれから2週間。あっという間です。




嵐のように過ぎ去って、終わってみると、「あれ?僕、本当にやったのだよな。幻じゃないよな。」と思うぐらい、実感がなく。


稽古が始まる前から千秋楽を迎えるまで、ずっと激動でした。


最初の無茶祭『一人芝居30分×6作品』や、前回の『セイムタイム、ネクストイヤー』の時もそうでしたが、企画者としては無事幕は開けるのかと、開けるのだと、ただただ必死で、毎日風がびゅうびゅう吹くような心情の中、「目の前のことを判断し、決めて、伝える」をひたすらに繰り返し、気づけば千秋楽でした。渦中、何かを振り返ったり噛み締めたりすることもなく。


『コップくんのひみつ』が無事終わったこと。

キャスト・スタッフに心からの感謝を。そして、ご来場くださったお客様、ありがとうございました。共に走っていただき、目撃していただき作品は生まれました。


「はじめて脚本を書いたこと」


なんとも特別な時間でした。



それなりに、ハードでした。

悔しさもあるし反省もたくさんあります。座組のみんなにかけてしまった迷惑や負担だってたくさんあります。


けれど、それでも、まず


あ〜〜〜〜〜〜〜〜よくがんばった自分。さすがに、さすがに。がんばった。

脚本・演出・舞台美術・宣伝美術・衣装デザイン(ベース)・選曲・声の出演・広報・運搬・企画などやりました

やりすぎている。完全にやりすぎだ。

反省することは、それはそれとして。


あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜無事終わった。

さすがに、すごいがんばった!僕としては。



昨年の頭に無茶祭2023宣言をして、

①写真展に挑戦する

②海外戯曲2人芝居に挑戦する

③作・演出に挑戦する

と声高に言ったものの、上半期はまるで動けずに、2023年下半期と2023年度末にかけて、無茶を3作品発表。そもそもが無茶なのに。駆け回るようにして過ごしました。

あ〜〜〜〜〜〜〜〜終わった。


今気づいたけれど、このブログで、『コップくんのひみつ』について、僕全然書けていないな。前回の記事はこちら。(前回の記事は、まだ脚本執筆中でした。正式な情報公開さえしてないじゃないか!)


★『コップくんのひみつ』素敵予告動画(制作:つかてつお氏)はこちら

★藤尾の突然のコメンど動画はこちら

★ナタリーさんの記事はこちら





はじめての執筆


今年、2024年の頭から、どんな物語を書くか、タイトルをどうするかの最終決定に1ヶ月かかり、その後「うおおおお!」とフライヤーのデザインをして、そこから2月の本稽古開始までに第一稿を書き上げました。

書き上げたはいいものの、そこからリライトがはじまり、ほぼ全改訂する勢いで、というか全改訂して第二稿を書き、7割ほど書いたところで一度行き詰まりました。

そんな時、改めてみんなに第一稿を読んでもらう機会がありまして、それを聞きながら僕はなんだか号泣してしまい、「あれ、僕、この作品好きだぞ。とても」と思い返し、第一稿に立ち戻り、そちらを加筆修正することに決めました。即決しました。(第二稿も好きなシーンたくさんあったんですけどね。雨のシーンとか。ケンタウロスのムーンウォークとか、ヨーヨーマとか。なんのこっちゃ。)

紆余曲折ありましたが、僕は第一稿をみんなで読み直した日のことを、きっと忘れないと思います。


とにかく、結局、脚本の修正に時間を取られてしまい、座組の皆さまにはたくさんご負担をおかけしてしまいました。(繰り返し謝りました。反省しています。この場では、「ごめんなさい」は言いません。)





森の不思議な生き物たち


今回の登場人物たち(森の不思議な生き物)は、実はかなり前に誕生していました。昨年の11月ごろには存在していたのかなあ、確か。

当時、物語も決まっていないのに、ふと思い立ってキャラクター設定のようなものだけ勢いで書いてみた時に生まれたのが


・ロックンロールちゃん

・ケンタウロス

・コップくん

・黒板消しちゃん


です。


とはいえ、それらの設定をいったん放ったらかして、ずっと「何を書いたらいいのだ」「決められない」と1月中ずっと悩んでいました。そこで友人に相談して、いろいろな創作メモを読んでもらった際に、「もうキャラクターできてるじゃん、いいじゃん」と言われ、「え?あ、確かに。」と、かつて書いた4名を表舞台にあげ、そこに後からドーナツがやってきて、この物語の生き物たちが全員揃いました。


劇中に登場したもう一匹の生き物「ヤッポソ」は、1月に、これまた勢いで試しに台本を書き始めたら、なぜか当たり前みたいにそこにいたキャラクターです。そんな予定全くなかったのに。

誕生してすぐに容姿もはっきりしました。

こういう時の、なぜか気づいたら生まれてる感じ、なんなんだろう。

なんなんだよ、その名前は。ヤッポソって。


↓ヤッポソ(劇中ヤッポソ制作:廣川真菜美氏)




なぜだか、はじめての脚本で人間を書く気にならなかった


なんでなんでしょう。

人間を書きたくなかったし、しんどい話もできるだけ書きたくなかったです。

どうして、しんどい思いをして生きている人が身の回りにたくさんいるのに、これ以上悲しいお話を書くのだ。はじめての作品で。僕は、嘘でもいいから希望が見たいよ。そんなことをずっと思っていました。(もちろん、物語で描かれる哀しみが誰かを救ったり寄り添うことも知っている。そして、希望を描くなんて傲慢だとも思う。でも、僕はちょっと、「答えの出ない問い」を演劇の中で提示されることにちょっと疲れていたんだと思います。



結局、勘で生きている


無茶祭2023をやる!と宣言した時。(さっきのやつ

宣言のためのだけのチラシ用に、衣裳の美都さんにピンクのもこもこを制作していただきました。その後、もこもこをどう使うかとか、何にも考えずに!!

ただただ「日本海でピンクのもこもこを着ていたい!!僕が!」という、それだけでした。

でもきっと、そんな衝動は全て繋がっていて。


気づけば、昨年まだ物語は何にも見えていない段階で、美都さんに、「来年もこもこをたくさんお願いすることになると思います」とお伝えしていました。


人生初脚本のお芝居は着ぐるみのお芝居になりました。

でも、なんだか僕らしいなとも思います。





脚本の勉強


結局、たいして脚本の勉強をせずに書き切りました。映画やアニメをたくさん見ました。

脚本の書き方の本も読んだりしたけど、オリザさんの本も読んだけれど、「今回は多分違うな」と思い、好き勝手やることにしました。

むしろ書き切ることで、発見がたくさんありました。いっぱい意見をもらいました。


「脚本のリライトは、まだやりたいですか?」と聞かれたら、

「もちろんです!」と僕は即答します。


その上で、今回の『コップくんのひみつ』はこれでいい。

今、僕は心からそう思います。


技術とは、作品を”たくさん”の方に深く届けるための技なのだなと、今、僕は解釈しています。今の僕には技術はない。でも、それでも、この作品が、観てくださった誰かの心に届いたことも、僕は知っています。届いてよかった。ありがたいことです。


情報を出すタイミングと密度、謎の残し方、観る側にとっての興味関心の動線、それぞれの役の目的と障害の動線をもっと明瞭に。全体的にもう少し対話の要素を増やしたい。「出来事」を増やす。


例えば、上記のような点を中心にリライトしたいところです。あくまで童話的世界観の範疇で。書き切ることって本当に学びになる。


ただ、同時に、それでも、


なんも知らないで自分の感覚・衝動・自分なりのバランス感覚で突き進んだ今回の『コップくんのひみつ』も、多分、もう、きっと書けない作品なのだろうとも思います。強引だし、あまりに直接的だし、謎あんまりないし、めっちゃ言葉で言うし、でもそのとにかくのストレートさを僕はやっぱり今やりたかったし、笑っちゃうぐらいまっすぐな作品ができたなと思っています。いいや。上手くなくて。

色々引き受けた上で、そう思えるようになりました。


舞台上と客席の関係性はステージによってかなり変動したけれど、それでも、最終的に、剛腕によって、なんとか手をつなぐ!!それでも手はつなげる。そんなことを信じられた公演になりました。

そのことを感じさせてくれた座組に感謝を。お客様に感謝を。



僕が、人生ではじめて宣伝美術を担当した時に、気分は近いです。「技術はないけれど、でも何かがそこに乗っかった自負はある。技術は後からついてくる」




選曲について


9割以上、選曲も自分で行いました。『セイムタイム〜』の時ほどではないけれど、ホリくんに、アーティストを少し紹介してもらったりもしながら。執筆しながら、目指す方向の音楽を聴き漁り、台本のリライトを終えてから一気に決めにかかりました。「作品の、どこに音楽が必要なのか」丁寧に吟味する時間もないまま、直感でバシバシ決めていきましたが、割といいバランスで世界観や物語と並走する選曲になったのではないかと思います。

選曲も結構評判が良くて、それは嬉しい限りです。


執筆する前から、テーマソングのように存在していた曲がありまして、その曲はカーテンコールでかけました。

あと、もう一曲、こちらは僕の内面的に、ある意味コップくんの内面的にずっとかけたかった曲もありまして、そっちはいよいよかけどころがなかったので、開場中の音楽としました。そのナンバーが、お芝居の後半、ロックテイストなカバーでリフレインする構成、悪くないと思っています。


その曲の歌詞の一行目に「CUP」ってワードが出てきます。あとで気づきました。素敵な偶然。↓


「言葉は、紙コップに注ぐ振り止まぬ雨のようにあふれつづける。言葉の群れは宇宙をすべっていく」

ちなみに、最終的にぼつにしたコップくんのラジオの台詞↓


「僕はたまに、自分のことを人工衛星みたいに感じることがあります。馬鹿げた妄想だと思います。でも、どこにも着陸できなくて、みんなどこかに着陸しているように見えるのに、どこかの星に住んでいるように見えるのに、どうしてだか自分だけ、そこにいられないような。」

今、久しぶりに『コップくんのひみつ』のプレイリストを聴きながら書いているのだけれど、とっても、愛おしいな、この作品。なんだか。

自分で書いたんだから、そりゃそうなのかな?そうなのかな?ほんとに?

なんだかとても、ありがとうございますと思うのです。

この世界、やっぱり愛おしいや。




もう大人


「若い人にたくさん観てもらいたい」そんなご感想も、たくさんいただきました。

わかる気もします。若い時の方が、過去との清算がついていなかったり、その影響に無自覚だったり。アンコントロールな自己防衛に対して、それを自分で制御するための言葉を持ち合わせていなかったり、それでも自分に対しての執着はとっても強くて、もがいていて。

大人と子供の線引きなんて曖昧なものだけれど。それでも、私たちには、この時代の大人のロールモデルが必要だし、大人になることは素敵なことだと、大人という言葉の価値を取り戻したいと、僕は普段から思っていて、そんな気持ちもどこかでこの作品の栄養になっていました。


ロックンロールちゃんは希望で、ケンタウロスは純朴だから引き裂かれる私たちで、コップくんは過去に囚われたチャーリー・ブラウンで、ドーナツは悲しみの隙間から見える星空で、黒板消しちゃんは、それでも誰よりも先に引き受ける





このお話は、きっと僕が大人になったから書けたお話で。

だから、今回の執筆は、僕にとって「書くことでなんとか生きていられる」とかそういうことではなくて。それでも、僕の周りの大切な人だっていつまで生きているかわからないから。そんな気持ちが根っこにはありました。


あ、でも、あれだ。

僕にとって、この作品で取り扱う悩みは少し昔の自分の悩みぐらいに思っていたけれど、創作しながら、やっぱり怖いことはたくさんあるし、「あ〜僕はまだまだコップくんじゃん」とか、そんなことも思った無茶の日々でした。


私たちが振り回されるのは過去そのものではなくて、過去から影響を受けた今で、行動の傾向で。その一つが「自己防衛の戦略」で。例えば、コップくんにとってはそれが「コップになる」と言うことで。(あ、「コップになること」、あれは私の実話です。一応。)


↓執筆していた時に、気分転換に本ばっかり買っていました。全然読みきれなかったので、今後ちょっとずつ読んでいきます。1ヶ月読書だけして過ごしたい。というか、半年以上無茶したんだ。2ヶ月ぐらい休みたい。




料金自由選択制


3500円〜7000円で自由にお選びくださいという試み。


我ながら見たことない料金設定でしたが、上手くいけば、みんながWINWINになるのではという企画でした。


結論だけ申し上げます! 上手くいきました!!

やってよかった!!!!!


これ、商業規模だと難しいと思うけど、小さな規模なら結構今後ありなんじゃないかなあと思える体験でした。お客様、ありがとうございました!!




最後に


今回は、本当に過去最大の無茶で、

その公演が、「またみんな会おうね」と互いにさよならできたこと。

僕の知る限り、みんな元気そうに今も暮らしてお仕事していること。

ああ、よかった。


なんだかんだ、創作の「場」(のあり方)を楽しんでただけた可能性もあること。

座組のメンバーから、公演後そんなご感想をたくさんいただけたことも、とっても嬉しくありがたいことです。必死すぎて気づけていなかったけれど、実は育っていた芽がたくさんあったのかもしれないと、僕は終わってから気づいたりしております。


反省することも書こうかなとか思っていたけれど、それは個人的に反省して改善していけばいいかと、今は思っているので、やっぱり書きません!


ああ、挑戦してみてよかった。

この公演で今すぐ何が大きく変わるとかではないけれど、それでも僕にとっては事件のような、大きな出来事でした。そして「やり切る」ことで、はじめて得られるものがたくさんありました。

ホリくん、輝蕗ちゃん、帯金さん、春世、幸良くん、永さん、日和ちゃん、佐々木ちゃん、古川、暁さん、相澤さん、まなみん、美都さん、ちなつ、あすかさん、なつきさん、てつ、保坂、晶子ちゃん、花ちゃん、アトリエ第Q藝術さん、手伝ってくださったたくさんの方々、お客様、気にかけてくださった皆様、本当にありがとうございました。



藤尾勘太郎の無茶祭はこれにておしまい!


もうきっと無茶祭はやりません。


ポジティブな意味で、もう「無茶」じゃなくていいなと。

自分のためにも、他者のためにも。


個人企画はきっとまた、やります。

無茶祭全体の感想は、そのうちまた書きます。



無茶祭2023が終わり、

ようやく藤尾の2024年がはじまりました。


みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします〜〜!!






p.s.『コップくんのひみつ』の、素敵な愛おしい衣裳たちは、天日干しののち、大切に「その日まで」保管しております。


ではまた。





稽古初日↓


公演の初日(たぶん)



初日あけた夜






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