あけましておめでとうございます。
新年早々とてもめでたいことがありましたので、SNSではすでに発表済みですが、こちらでもご報告いたします。
王子小劇場が、自劇場の年間上演作品に対して贈る賞、佐藤佐吉賞を、
フジオモラル破局公演「アンチカンポー・オペレーション」が
優秀作品賞
優秀男優賞 藤尾勘太郎
優秀助演男優賞 田島亮
優秀助演女優賞 鈴木アメリ
優秀音響賞 井上直裕
5部門受賞しました!
5部門って、2018年最多タイぐらいじゃないでしょうか。
これだけでも、とてもとても嬉しかったのですが
昨日その授賞式と最優秀賞の発表がありまして、
佐藤佐吉賞2018
最優秀男優賞をいただきました!!
えええええええええええええ !
ええと、僕が、です。
「最」優秀賞です。(優秀賞5人から選ばれます)
発表を聞いた瞬間、心があんぐりしました。
まだ信じられないというか、いや賞状も戴きましたからさすがに信じますが、人生にはこんなこともあるんだなあというか、どうもまだ僕の語彙の網にうまく感情が引っかからない、という状態です。あわあわしています。「役者として賞を戴く」という事が人生初めてなんです。(ちなみに2016年に、優秀宣伝美術賞を戴きました。僕にとって役者より後輩のデザインの仕事が先に賞を戴いたのです。嬉しいけれど複雑な思いもありました。)
なので、とりあえず、まずは、このことははっきり言葉にしておきます。
とても嬉しいです。とても、嬉しいです。
受賞後に、これまでの最優秀男優賞受賞者の方々のお名前を見て、誇らしい気持ちになると同時に背筋が伸びました。
受賞の挨拶で僕は何をしゃべったか、果たしてしゃべれていたのか、あんまり覚えていません。えらく長くしゃべっちゃった気がします。
演劇をつくってきた人たちが集まり、最優秀の発表という薄〜く緊張感もある空間で、お互いに敬意をもって讃え合う、あの会場の空気が好きでした。それぞれ演劇とどう向き合ってきたのかが、ちらりちらりと垣間見える、いい時間でした。
あらためて、フジオモラル破局公演は、10年間「犬と串」という場所で演劇をつくりあってきた僕とモラルがサヨナラする、破局するための公演でした。活動してきた10年間で、他の劇団員が続々と賞を受賞する中、先に申し上げた通り、僕は賞というものに無縁のまま退団しました。いや、全然いいんです。僕はそう思っていました。(まあ、悔しい気持ちが全くないと言えば嘘ではありますね。)
この破局公演の動き出しの頃、モラルと2人で話していて、
モラルが
「俺(モラル)の書いた台詞をこれだけ自分の言葉として藤尾が届けられるということはすごいことであって、その化学反応も含めて、モラル作品に出演する藤尾は
もっと評価されていい、まだまだ不当に評価されていない、されるべきだし、させたい」そんなようなことを言っていたのを思い出します。(あくまでニュアンスです。)
また、破局公演を王子小劇場で上演することが決まったのは、たまたまいい時期に小屋が空いていたということもありましたが、「王子には佐藤佐吉賞がある。せっかくやるなら賞を狙いたい。」そんなこともモラルは言っていた気がします。2人でやるの最後ですからね。
もっとも、いざ怒涛の稽古〜本番となると、必死すぎて賞の存在なんて二人ともすっかり忘れていましたが。
僕がこの賞を戴けたこと、それは当然僕ひとりの力ではありませんし、素晴らしいキャスト、スタッフ、観に来てくださったお客様への感謝はつきません。この賞を下さった王子小劇場への感謝の気持ちも、もちろんあります。
ただ、その上で、やっぱり、まず
最優秀、受賞したぞモラル。受賞したぞ。ありがとう。
と、モラルに言いたい。
まあ、「受賞したぞ」もなにも、モラルは王子職員なので、僕の受賞は前もって知っている訳です。
(今回はモラルの作品が5部門もノミネートされていたので、王子職員の話し合いではモラルはほとんど何も言えなかったそうです。当事者なので佐吉賞の話し合いを見守るしかない。)
そんなモラルが、各最優秀賞発表の直前、「前で一緒に野次を飛ばして盛り上げようぜ」と言うので、「後ろの方ででしっぽり聞いていたいなあ」ともぼんやり思いながらも、最前列に2人で並んで座って発表を聞きました。
結果を知っている相方が隣にいるわけですよ。その事に少しザワザワしますし、発表の際も「受賞?!本当に??!やったーー!」みないなことには、当然モラルはならない訳です。ならないし、なれない。
最優秀男優賞の発表。
僕の名前が読み上げられた時、モラルは、ただ黙って僕の顔を見て嬉しそうにしていました。(いや、「おめでとう」って言ってた気もするな。言ってたな多分。とにかく記憶が曖昧なんです、あのあたりの時間。なんだかスローモーションでした。)モラルから「ようやくこの事実を共有できる。ようやく祝える。」というようなエネルギーが、無言のうちに僕の方に流れ出してきました。
「あ、こいつ(モラル)、このために、この瞬間のために、一緒に発表を聞こうって言ってた訳だな」と思いました。そんなモラルに見送られながら壇上に上がり、賞状を戴いて、長々しゃべりました。
モラルにこの賞をプレゼントされたような心地になりました。
同時に
「僕がモラル作品で役者として賞をもらった」というプレゼントをモラルに渡すことができた気持ちにもなりました。
破局公演の演目がすでに、僕がモラルを応援しているのか、モラルが僕を応援しているのか分からないような作品でしたが、最後までそんな時間を過ごすことになりました。
公演も終えて、モラルともしばらくは会わないものかと思っていたら、こんな続きがあるとは思ってもみませんでした。
演劇って何でしょう。いろいろな演劇がある中、「ただ2人の関係」から始まった演劇がこうしてはじめからお尻まで、一貫して繋がった事を感慨深く思います。
華々しく終える事ができた事を誇りに思います。
なんども恐縮ですが、座組の皆様本当にありがとうございました。また飲みましょう。
お客様、また劇場でお会いできれば幸いです。
最後に、僕個人についてひとこと。
この賞を戴いた事で、僕は背中をどんっと押されたような思いがします。
賞はそれ自体は食べる事もできないし、賞状以外は目にも見えないし、これがあると友達が増えるとか、急に演技が上手になるとか、そういった代物ではありませんが、少なからず、僕自身の中で変化は起こりました。賞っておそろしいですね。そして嬉しいです。
二日酔いが全然治りません。
今年もまだ始まったばかり、どうぞ今年もよろしくお願い致します。
2019年1月8日
藤尾勘太郎